【展望】アフターコロナ後の印刷業界

第5波もピークアウトしたようです。晩秋から初冬にかけ第6波の再来は避けられそうもありませんが、ワクチン接種が一巡することから、新たなる緊急事態宣言の発令には強い抑制力が働くでしょう。総理大臣も替わり、衆議院総選挙で政界のバランスも変わりそうです。10月から年始が終わるぐらいまでは、誰が施政者であっても、経済を全回転させたいと考えているはずです。

印刷業界的には特需が見込めたはずのオリンピックの需要が蒸発してしまいました。9月末まで大都市圏にて緊急事態宣言が続くと考えると、告知系の印刷物の需要が回復するのは10月からになりそうです。

10月以降のイベントは長い自粛期間あけということもあって、あらゆるレイヤーのパフォーマーにとって気合いの入ったものになりそうです。とはいえ大々的に集客することを躊躇う空気は簡単には払拭できないでしょうから、イベントの開催にはより細やかな気配りが必須となります。その手段として、感染予防対策の周知徹底のために、それを伝える媒体としての印刷物の需要は確実に見込めます。

10月11月に活動を再開して世間の雰囲気を察しながら、年末年始に規模を拡大したイベントを開催して過去2年稼げなかった分を取り戻そうというのは、自然な人の感情ですし、第6波の規模に左右されますが、なんとかそれを抑え込んで景気のよい年末年始商戦を迎えたい。これは業界問わず誰もが願っていることです。

コロナ禍を挟んだ印刷界隈の変化

  • 自宅PCでのデータ作成の広がり
    • テレワーク・在宅ワークの広がりから、それまで社内で作られていた印刷データを社員が自宅で作業するシチュエーションが確実に増えたことをデータを受け取る側として強く感じます。ZOOM等の普及で高速回線を新に導入した家庭も多いです。ネット印刷業界としては、潜在顧客の母数が増えたことになります。負の側面ばかりのパンデミックですが、ポジティヴな側面を探せばこのあたりになるでしょう。
  • 作成ソフトウェア・アプリの多様化
    • 弊社は以前からマイナーソフトウェア・アプリケーションで作成された印刷データの最適化を得意としてきました。上記の在宅ワーカーの増大により、プロ用のソフトウェアだけではない、データ作成手段としてのソフト・アプリの多様化を強く感じます。M1スペックのMacの登場で、新にApple Pagesを利用されるMacユーザーが増えました。また固定費削減の観点からAdobeのサブスクリプションから、入手コストが極めて低いAffnityシリーズへの置換に踏み切った法人も増えつつあります。またcanvaをはじめとしたクラウド上のデザインツールで印刷データを作ってしまう個人・法人も増えました。
  • iPad作成データの増加
    • イラストレーターや漫画家では既にペンタブレットからiPad+Apple Pencilへ作画ツールの変更が大きな潮流になっています。CPUの性能が著しくアップした昨今、動画編集ならともかく、二次元データの印刷データの作成にタブレットの性能は十二分過ぎるほどです。この傾向はさらに拡大するでしょう。

アフターコロナに向けて

印刷業界にとってポジティヴな側面は現実問題としてほとんど無かったわけです。2年という長期にわたって需要がシュリンクしてしまいましたので、仮に景気がよくなってもコロナ前までの水準に印刷物の需要が増えるとは考えられません。とはいえ、良かれ悪かれトレンドが変化したので、変化は商機という言葉を噛みしめて、アフターコロナの新時代を皆様と乗り越えたい所存です。